2019年2月24日

「ひたむきな信仰を」

 カナンの女性の娘をめぐる癒しの物語では、イエスも弟子たちも助けを求める母親の声に冷ややかな態度を隠しません。イエスは何も語らず、弟子たちは彼女を追い払おうとします。男性優位の価値観にある当時の世界、そして異邦人(外国人)を差別し蔑視する当時のユダヤ人社会。社会の現実を反映するように今日の聖書に記されるイエスと弟子たちは、女性であり異邦人である母親に対して氷のように冷たく感じるのは、気のせいでしょうか。   その冷めた状況をとかし、応答を引き出し、娘の病の癒しが実現するに至ったのは、どこまでも叫びながらついて来ようとする母親の娘のことを思う切実さ、「女は弱し、されど母は強し」という言葉を思い起こします。そして機知とユーモアにあふれ徹底したイエスへの信頼の姿があります。

 イエスの応対は、そのひたむきな姿に接することによって変化していきます。そして最後には、「婦人よ、あなたの信仰は立派だ。あなたの願いどおりになるように」と驚嘆の声すら上げられ、娘はそのとき癒やされたのでした。   ここには病という苦しみがあり、癒しを求める人びとの姿があります。そうした病からの救いを、神に私たちは願い求めます。一方は神の力によって人びとを癒やし、また他方は癒やされるのですが、その双方の出会いの中で、それぞれに変化が起きることを、この物語は私たちに語っているのではないでしょうか。

 主なる神は、私たちが救われるために最善の道を用意してくださいました。不思議な仕方で私たちは主イエス・キリストに出会い、主を信じる者にしていただきました。そのことを心から感謝いたしましょう。