2018年12月2日

「まことの光と闇」

 ヨハネによる福音書の中には、いわゆる「クリスマス物語」というべきものは記されていません。それは、マタイによる福音書とルカによる福音書に記された伝承によるものであって、マルコとヨハネによる福音書には、主イエス・キリストについての描写はいわゆる「公生涯」の部分から始まっています。

 マタイとルカのクリスマス物語の記事を読みますと、「夜」を背景にした場面が多いことに気がつきます。イエス様の父となったヨセフヘの啓示はつねに夢の中で、夜の間の出来事として描かれ、東方の学者たちは夜空に輝く星に導かれて旅をします。また、羊飼いたちに天使が現れ、主の誕生を告げたのも夜の出来事でした。これは偶然でしょうか。おそらく、そうではないと思います。                   福音書の物語が、とりわけ「夜」という時間に起こった出来事を伝えようとしている真意は、主の誕生が「闇」に包まれた時間、「闇」に覆われた世界の中で起こったということを強調しているように思います。

 これらふたつの福音書は、クリスマスは「夜」の時間に「闇」の世界のただなかで起こった出来事だったこと、そのようなところに「まことの光」がやって来た出来事だったことを告げようとしているのだと思います。そうであるなら、クリスマス物語が告げようとすることと、ヨハネによる福音書が語ろうとしていることは、ひとつの同じことであるといっていいでしょう。                         初代のキリスト者たちは、イエス・キリストこそ「まことの光」であると信じました。そして、それはまた同時に、初代のキリスト者たちがこの世の現実を「まことの闇」のようなものとして受けとめていたということも告げているのだと思うのです。