2016年7月24日

「偽りのない愛」

 この手紙の著者であるパウロは、かつて彼自身がキリストの教会を迫害する者でした。しかし主なる神はパウロを滅ぼさず、神の恵みと憐れみによって救われました。今やパウロは教会の指導者として立たされているのです。主なる神がなさることはなんと不思議なことなのでしょうか。

 この箇所には、「キリスト教的生活の規範」という小見出しが付けられています。キリストを信じる信仰者としての生活についての勧めが記されています。この部分に「兄弟愛をもって互いに愛し」(ロマ12:10)と書かれています。これまで赤の他人だった人びと同士が、父なる神と子なるキリストに結ばれて、兄弟姉妹の交わりをもっていくのです。 ここには教会内でのあり方だけではなく、教会外でのあり方についても書かれています。たとえば「あなたがたを迫害する者のために祝福を祈りなさい」(同14節)、「だれに対しても悪に悪を返さず、すべての人の前で善を行うように心がけなさい」(同17節)とあります。迫害をする者とは、教会内部の者ではないでしょう。しかし著者のパウロは迫害してくる人びとにも「祝福を祈りなさい」と言うのです。そのような人びとにも「兄弟愛をもって」接することが勧められているのです。そんなことが本当にできるでしょうか。

 十字架の上で、自分を殺そうとする者のために「父よ、彼らをお赦しください」(ルカ23:34)と、とりなし祈られた主イエスは、今も生きてキリスト者を支えてくださいます。  キリストの愛は敵を隣人に変えることができる。その愛は赤の他人を兄弟姉妹に変えることができるのだと、パウロは確信をもって伝えているのです。