2016年12月11日
「喜ばしい知らせ」
主イエスの生涯は、新約聖書に収められている四つの福音書によって語られています。その中で主イエスの誕生、あるいはそれにまつわる物語を記しているのは、マタイによる福音書とルカによる福音書のふたつです。
このルカが冒頭に、「テオフィロさま」に、この福音書を献呈するという「献呈の辞」が述べられています。このテオフィロとはどういう人か、いろいろな説があります。いずれにせよローマ帝国の高官であったと思われます。その人を特に相手として、献呈するために主イエスの生涯を書いた。 この時はまだキリスト教会がローマ帝国によって公に認められていたわけではありません。ですから、このテオフィロの周辺、その親類縁者の中にキリスト者になったために迫害を受け、殺された人もいたと伝えられています。
そういう状況において、伝道に励んでいたルカが、自分の恵まれた文筆の才能を生かして、自分は主イエスに実際お会いすることはなかったかもしれませんが、さまざまに教え聞かされてきた主イエスのお姿、その言葉を書きつらねようとしたのです。
イエス・キリストとは誰か、キリストと呼ばれる方は誰であるかということを、信仰と愛と誠実とを尽くして書こうとしました。そこに浮かび上がってくる主イエスの姿は、他の福音書と同じであると同時に、また、この福音書でなければ表すことのできない独特の視点をもっています。 このルカによる福音書は、マタイによる福音書がイエスの系図をながながと書くことで始めたのに対して、ひとりの身分の低いザカリアという無名の祭司であったひとの物語から始めています。