2016年10月16日
「イエスの沈黙」
エルサレムには「鶏鳴の聖ペテロ教会(The
Church of Saint Peter in Gallicantu)」という名前の教会が建っているそうです。ここは大祭司カイアファの官邸があったところだといわれています。
主イエスがゲッセマネの園で捕らえられ、キデロンの谷を下り、石畳の坂を登ったところに、この大祭司カイアファの官邸がありました。その中庭には井戸があり、主イエスが捕らえられた夜、この井戸の傍らで焚き火が燃やされていました。ペトロは暗闇にまぎれてそこに行き、人びとと一緒に焚き火にあたっていました。そこから見える広間では、大祭司が指揮をとって、主イエスに対する裁判が行われていました。「最高法院」(マルコ14:55)とは、いわばユダヤ人の国会でありました。ここで人びとは、主イエスをローマ総督に訴え出て死罪宣言をするように要求するための、罪状を確定しようとしました。 そのためには、イエスがローマ帝国に謀反を起こそうとしている政治犯であることが証明されなければなりませんでした。大祭司たちは、主イエスが神の子、まことの王であると主張し、さらにはローマヘの反逆、ユダヤの独立をけしかけているという証拠を握ろうとします。
マルコによる福音書では、人びとが主イエスを訴えようとして提出した罪状は、いずれも証拠を挙げることができなかったと記されています。人びとが主イエスを憎み、汚名を着せて葬り去ろうとしていたとき、この「主の僕(しもべ)」(イザヤ書53章)はそれに対して何の弁明も抗議もせず、だまってその苦しみを耐えるのです。
主イエスは、自分を陥れようとする人びとに対して、屠り場に引かれて行く羊のように黙したまま、与えられた十字架への道を歩まれるのです。