2017年3月12日

「五つのパンと二匹の魚」

 パンの奇跡というのは、旧約聖書においても、神が奇跡的な仕方でイスラエルの民に食物を与えられたことが記されています。それらはいずれも、イスラエルの民が非常な危機にあった時代においてです。ひとつは、出エジプト16章に出てくるマナの奇跡です。これはイスラエルの国民的体験の基礎になり、後々まで神に選ばれし民としての恵みと喜びを物語る奇跡として語り継がれています。また、神の奇跡的な養いは、二人の預言者エリヤとエリシャの時代にも起こされます。たとえば、列王下4章には、エリシャが大麦パン20個で100人の人を食べさせ、かつ食べきれずに余したという出来事が報告されています。  これらの聖書的背景の中で、マタイによる福音書におけるパンの奇跡を考えると、いかにこれがたいせつな意味をもっていたか、わかるのではないでしょうか。パンの奇跡は、主イエスこそ旧約聖書が予告していた真のメシアであるというメッセージを伝えています。これがすべての福音書に共通して伝えられている唯一の奇跡であることにも注目したいと思います。

 また、キリストの教会にはメシアである主イエスがおられるので、たとえ私たちは小さく弱く脆くとも、主は私たちのわずかな賜物を用いて大きな業を成し遂げてくださるということを、信じたいと願います。 キリストの教会は現代にあっても、この世にまことの命の糧を与えるつとめを果たすことができるのです。主イエスが共にいますかぎり、伝道の業が空しく終わることはないのです。

 本日、礼拝後に教会定時総会が行われます。主イエスの業に、私たちも主体的信仰をもって、たずさわり経験するものでありたいと、切に願います。